現場からの無線機設計物語


物語は架空のものです。回路は実際の無線に使った回路を参考にしています。

田舎の小さな街に、主にラジオを販売し細々と営んでいるラジオ屋さんがありました。
その店の名前は「小さな街のラジオ屋さん」です。
その小さな街のラジオ屋さに、とあるメーカ(A工業)の技術部から電話がありました。
無線でデータ伝送をしたいが、A工業には高周波技術者がいないので、無線部分の設計を請け負ってもらいたいという内容でした。

店主は”店には実験をするお金もないし、開発費で面白そうな実験も出来るし、、、やってみるかな?”と、軽く考え請け負ってしまったのです。
無線機の設計の怖さを店主はあとで知ることになるのでした・・・・・。
店主はローカル線の2時間乗り、、A工業がある東京に向かました。会議室に通され待つこと30分。
いよいよ打ち合わせが始まりました。
温度測定データを無線で飛ばし、違う場所で受信しデータ収集に使いたいということでした。
温度データは何回か常に送信され、受信機は連続的に受信するという動作だそうです。
A工業よりからの資料では、図1のよう、無線部分と制御部分から構成されていました。
この内、赤い部分で囲まれた無線部分の開発・設計をして欲しいとこです。


(図1)

無線部分の仕様は表1のようになっていました。
通信方式 単向通信
送信電力 微弱無線
変調方式 直接 FSK変調
データ速度 1200bps
電源電圧 送信:3V,受信:5V
無線チャンネル 1波のみ
通信距離 10m位
(表1)

A工業から「小さな街のラジオ屋さん」に戻った店主は、詳細な仕様を決める前に微弱電波の仕様について調べてみることにしました。
電波法とういものがありその中で電界強度で決められていることを初めて知ったのです。
微弱無線の規格は電波の強さであり、無線機から発射される送信電力ではないのです。大まかには表2のようになります。
322MHz以下 500μV/m以下
322MHzを超え10GHz以下 35μV/m以下
(表2)
周波数は322MHz以下が電波も強く出せるようでした。また部品の入手性も考慮に入れて周波数を315NHzとすることに決めました。
店主は、アナログ無線は得意でしたが、データ通信は経験がありませんでした。FSK・・・なんだろう、、、、
調べてみると、FSKは(Frequency Shift Keying)の略でした。アナログのFM(周波数変調)に相当するものだと
分かってきました。FM変調は、電波の周波数を音声などの変調波で変化さる変調方式です。
図2の上は音声などの変調波、下は電波です。電波の周波数が変化した様子を表しています。


(図2)

直接FSKは、図3のようにデータ(矩形波)で電波の周波数変化させるといことが分かりました。
上はデータ波形、下は電波  データによって電波の周波数が変化しています。
基本的にはアナログのFM変調と似ているので、店主は、アナログFM変調の回路を思い浮かました。
これで少し店主は、なんとかなると思い安心しました。


(図3)

店主は、ぼんやりとFSKにつて分かりましたので、無線部分の仕様を表3のように作成してみました。
FM方式の特徴の1つで、同時に同じ周波数で電波を受信した場合、FM波には周波数変化量に情報を
持つ性格上、振幅制限器があり、強い電波の方を受信するとい特徴があります。
この電波の性格のために、振幅変調(AM)波よりもノイズに強いと言われるのはこの性格のためです。
通信方式 単行方式
送信電力 微弱無線の規格内
変調方式 直接FSK
無線チャンネル 1波  315MHz
電源電圧 受信機:5V   送信機:3V 
通信距離 10m程
受信感度 -113dBm
動作温度 0℃〜50℃(A工業からの指示)
(表3)
店主は、興味が沸きその他の変調方式について勉強してみることしました。MSK、GMSKとFM変調を利用したものが
たくさんあることも分かりました。振幅変調(AM)を利用したものもありました。
振幅変調(AM)変調を利用して、データ通信を行う変調は、ASK、OOKがあります。
ASKはAmplitude Shift Keyingの略です。データによって電波の振幅を変化させることになります。
OOKはon off keyingの略です。データのよって電波を出したり、止めたりすることで、データ情報を送ることになります。
モールス通信はOOKの原型と言えると思います。
単行通信方式というのは、図4のように送信機電波を出し、受信機では受信する方式です。受信機をたくさん準備すると、
一度にたくさんの人へ情報を送る送ることができます。ワイヤレスマイクなどがこの通信方式になります。


図4

単行方式を発展させたが単信方式です。図5に示すように、同じ周波数の電波を使い、送信と受信を切り替えて通信を行います。
単信方式に比べると、電波の利用効率が単行通信方式よりもよくなります。


図5

図6のように、2つの周波数違う電波を使って、送信・受信を同時に行う通信を復信方式といいます。
コードレス電話は、復信方式になります。
PHSのように周波数を2つ使わず、送信している時間を分ける時分割方式もあります。

図6
小さな街のラジオ屋さんの夜は更けていくのです・・・・・



第2話作成中暫くお待ちください。


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